「焼成後冷凍パン」で焼きたてを全国へ。補助金でアイディアを形に!
上士幌町で、1957年から食品スーパーを営む「片原商店」。長年、町の人々の暮らしを支えています。2013年からは、事業多角化の一環として地場食材を使ったベーカリー「トカトカ」をオープンしました。現在は町内だけでなく帯広市・音更町にも店舗を構え、さらに2022年からは、解凍するだけで食べることができる"焼成後冷凍パン"の製造販売を開始。冷凍自動販売機での商品販売や、ふるさと納税の返礼品に出品するなど、販路拡大に取り組んでいます。
人口減少や、中型・大型スーパーの進出など、地元のスーパーを取り巻く環境は厳しさを増しています。将来、食品スーパーだけでは会社が立ち行かなくなるだろうとの考えから、ベーカリー事業を拡大し、経営基盤の強化に取り組んできた同社。ところが、そのベーカリー事業もコロナ禍で大きな打撃を受けます。
「コロナが蔓延し始めたのは、ものづくり補助金を使ってパンの増産体制を整え、新しい道の駅に店舗を移転した矢先でした。客足は途絶え、想定していた売上を下回る日々。焼きたてのパンをあえて冷まして袋詰めするなど、衛生対策も必要でした。コストが嵩むことも苦しかったのですが、何よりも焼きたてをお客様に提供できないことに、社員みんなが苦しんでいました」と、同社取締役の星さん。
【▼焼きたてのパンを冷ましてから包装】
しかし、「お客様を待っているだけでは先はない」という思いと、常に新たな可能性にアンテナを張っている星さんの行動力が、新たな挑戦へと向かわせました。
「実は以前から"冷凍"には高い関心を持っていました。そんな中、これまで以上にインターネット販売や冷凍食品のニーズが高まっていくのを目の当たりに。そこで改めて、解凍するだけで美味しく食べられる"焼成後冷凍パン"に可能性を感じるようになりました」。
解凍後も焼きたてと遜色のない、おいしい冷凍パンを作るには、新しく設備を整える必要がありました。そこで、同社では事業再構築補助金の申請を検討し始めました。
「不安もありましたが、まずは帯広信金に構想を相談しました。すると、担当者さんから"きちんと構想を練れば、採択を狙えるかもしれない。やってみましょう"という一言が。それから何度もやりとりを重ね、やっと申請することができました。細かい調整など、苦労したことも多くありましたが、信金の担当者さんからは率直な意見が聞けましたし、背中を押し続けてもらった気がします」。
【▼パンを急速冷凍するための3Dフリーザー】
2022年3月、補助金が採択され、同年11月には冷凍パンの製造体制が整いました。まずは、上士幌町のふるさと納税の返礼品として出品することと、補助金で導入した冷凍自動販売機で商品を販売することからスタート。今では、ふるさと納税サイトのパン部門ランキングで上位にランクインするほど、人気が出てきました。
「トカトカの冷凍パンは、解凍するだけで売り場に並べられるので、キッチンを持たない小さなお店でも販売できるのが強みです。パンを扱ってくださっているお取引先様からも、ご好評いただいています。それに、惣菜パンから菓子パンまで、色々な種類をご用意することも意識しています。もともと"トカトカ"は、上士幌町にあった最後のパン屋さんの役割を引き継ぐために生まれました。同じようにパン屋さんが少ない地域に住む人にも、おいしいパンを楽しんでもらえたら、と思っています」。
トカトカが積極的な設備投資を進めた理由には、ともすれば深夜から始まるパン製造業の働き方改革の意味も含んでいました。手作りにこだわる部分を残しつつ、機械に任せられる部分は任せる。そのように効率よくパンを製造し、焼きたてと遜色のないパンを届ける、という理想の形が実現しています。
「今後は、工場の製造能力を最大限活かして、BtoBを進めていきたいですね。この先、コロナ禍で変化した消費者行動やニーズが戻るとは考えていません。オリジナルのECサイトを含め、多様な販路開拓が必要だと思っています」。
リベイクやパンフォーユーなど、さまざまな企業と連携しながら、上士幌発のおいしいパンを広めていけたら、と専務の星さん。素材や手作り感へのこだわり、作る人の働きやすさ、そして何よりもパンを口にする消費者と地域への想い。"トカトカ"の熱意が、今日もたくさんのパンとして、お客様のもとへと届いています。
≪有限会社片原商店≫
・トカトカ 上士幌店:北海道河東郡上士幌町上士幌東3線227-1 道の駅かみしほろ内
・トカトカ ハピオ木野店:北海道音更町木野大通西7丁目 ハピオ木野店内
・トカトカ 帯広やよい通り店:北海道帯広市東2条南27丁目22番27
※有限会社片原商店では、「十勝ナイタイ和牛」の取り扱いも行っています。ホームページはこちら
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