つくり手の想い とかちの味力 技術・魅力にせまる

Vol.4 十勝の豆

Vol.4 十勝の豆

お菓子も料理も、いろどり鮮やかに。
高品質で希少な豆類を育てる、生産者のこだわりに迫ります。

Episode 01 希少な豆を、手間を惜しまず大切に

手間を惜しまず、持続的な農業を志向する

北海道十勝・浦幌町で、多彩な作物を栽培する伊場ファーム。

小麦やじゃがいも等の十勝の代表的な作物も栽培していますが、中でも出色なのが白花豆、黒花豆、金時豆、栗豆等の手間暇かけて育てられた高級品種の豆類。

菜豆(さいとう)類と呼ばれるこれらの豆。インゲンマメの仲間ですが、菜豆には「サヤインゲン」として緑のさやをそのまま食べるものと、乾燥した豆を餡や和菓子などに用いる品種があり、十勝で広く作られているのは後者の方。甘納豆や豆パンに使われる金時豆や、白あんの材料になる手亡豆、ウズラの卵に似た皮の模様が特徴的なうずら豆などの様々な種類があり、栽培に非常に手間がかかることから、近年では生産量が少ない希少品種です。

一方で、十勝産の菜豆類はその味わいの良さから和菓子などに用いられる「高級菜豆」としてニーズもあり、小豆と同様に全国のお菓子屋さんや製餡業者等に出荷されています。伊場ファームでは、10ha程の農地でこの菜豆類を大切に栽培しています。

さらに、伊場さんは持続可能な農業を目指して、有機JAS認証を受けた4haの農地でライムギ、大豆、スイートコーンなどの有機栽培にも取り組んでいます。

「有機農業に力を入れることで、土壌の健康を保ちながら、環境に優しい農業を実践しています」と穏やかに語る伊場さん。

十勝では集約的な大規模農場が主流で、有機農業の比率はまだまだ少ないのが現状です。そんな中、近年の農薬・肥料価格の高騰もあって、同様の思考を持つ農家も徐々に増えてきました。十勝型の大規模農業における有機栽培のモデルとして、伊場さんは近隣の農家からも一目おかれる存在となっています。

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収益性の高い「豆」が、農業人口を守る

伊場ファーム全体の面積は34ha。十勝の農家一軒あたりの平均耕作面積と比べると、決して大きくはありません。
しかし伊場さんは、

3040haでも成り立つ高収益モデルが確立できれば、離農者が減って地域も持続可能になる。」

「有機栽培は単に環境に配慮するだけでなく、消費者からの高い評価を受けることが期待できる。」

と、収益性の高い農業の実現を目指しています。

例えば、白花豆は栽培から出荷まで手間と時間がかかる一方で、その収益性は非常に高いと言われています。栽培を始めて8年後には、単位面積当たりの収穫量が金時豆の約2倍になるなど、顕著な成果を上げている農家もいるそうです。

しかし、一般的な大規模農業と異なり、伊場さんの取り組む豆の栽培には手間が欠かせません。

1粒ずつ手でまく精密な種まきから始まり、竹の支柱を立てて、収穫前には根切り作業。さらに収穫後には収穫した豆を積み上げて天日干し。機械では実現できない細やかな手作業は、品質維持のために欠かせないものです。

伊場さんは「大変な作業ですねと言われますが、機械化できない部分にこそ地域農業の持続可能性を感じます。丁寧な手仕事が収益性を高めて、それで農村コミュニティが維持できるなら、魅力的な農業モデルだと思いませんか?」と話します。

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オーガニックから得た人と土のつながり

伊場さんのオーガニックへの歩みは、単に農業経営の多角化や農薬・肥料などの高騰対策のためというだけではなく、消費者が求めるものを提供する喜びに根ざしています。
「有機農業を行う中で消費者と直接やり取りする機会が増え、有機作物がいかに多くの人々にとって価値があるものかを実感しました。ただ作物を生産するだけではなく、食べる人々と深いつながりを持ち、彼らが本当に求めるものを提供するという、農業者としての新たな使命感を感じています。」と伊場さん。

消費者との関係も変化し、ECショップで販売を始めてからは、オーガニックの農産物を求める多くのお客様がリピーターとなりました。また、顔の見えるやり取りを通じて、作物の価値を理解し、農業自体に関心を持ってくれる人も増えてきています。農場のホームページに書かれた「いつでもいらしてください」とメッセージを見て、今ではお客様が実際に農場を訪れてくださることもあります。

有機栽培を始めてから、伊場さんは土壌にもより関心を抱くようになったといいます。

「有機栽培は、自然のサイクルと密接に関わって長期的に土壌の健康を向上させます。例えば、大豆やライムギのように背が高く成長が早い作物は、遮光効果によって雑草の成長を抑え、土壌の保護と改善を促してくれます。その結果、堆肥に頼ることなく作物自体が土壌を豊かにし、無理に土をいじらず自然の力で栽培環境を整えてくれるようになりました。」

収穫量の面では従来の農法に劣るものの、収益性や環境への影響を考慮すると、その価値は計り知れません。

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毎年変わる豆を楽しんでほしい

農産物は工業製品ではありません。例えば、同じ品種の豆でも、育った環境や土の違いによって全く異なる特性を持ちます。異なる条件で育った作物は、それぞれに独特の味わいや質感を持つのです。

「品質の安定化は目指さない」と伊場さんは語ります。

地域特有の土壌や、その年の気候が生み出す「今の味」を大切にすることで、消費者にその年ごとの特徴を味わう貴重な機会を提供できると考えているからです。

「特に豆は、"いつも同じ"だと思われがちですが、産地や時期で味や扱い方が異なるんです。その多様性を、消費者のみなさんには知って、楽しんで欲しい。この多様性こそが、日本の郷土料理を豊かにしている理由だと思います。」

土壌づくりから収穫までのプロセス全体にわたり、自然との調和を重んじ、持続可能な農業への深い理解と尊重を込めた取り組みを、丸ごと味わっていただける、伊場ファームの豆たちです。

おすすめレシピ

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白花豆・栗豆の粒マスタードサラダ

白花豆・栗豆ともに、ほくほくとした食感の豆ですが、白花豆は上品な甘味となめらかな肉質があり、栗豆は皮の風味がしっかりしていて後引く旨味があります。

2種類の豆の特徴が出るようにサラダの材料はシンプルにしましたが、豆の色が違うのでとても華やかなサラダになりました。醤油が入っているので和風にも感じますが、パンにのせても美味しく、お酒のおつまみにもぴったりです。

<材料>(2~3人分)

白花豆(乾燥)
50g
栗豆(乾燥)
50g
ゆで卵
2個
玉ねぎ
50g
【A】
粒マスタード
大さじ1
小さじ1
醤油
小さじ2
適量
こしょう
適量

<作り方>

(1)

豆はそれぞれ水に漬け、一晩おく(特に白花豆は一晩以上がおすすめ)

(2)

(1)の豆をそれぞれ鍋に移して強火にかけ、沸騰したら茹でこぼす。新しい水をたっぷり加えて、中火で加熱する。沸騰後、弱火で2~3時間加熱する。(豆の種類により異なります)途中で差し水をしながら柔らかく茹でたら、ザルに上げて水気を切っておく。(茹で豆の状態で、250gほどあれば良いです)

(3)

玉ねぎはみじん切りにし、5分ほど水にさらし、水気を切る。

(4)

卵はお好みの固さに茹で、殻をむき、粗いみじん切りにする。

(5)

ボウルに【A】を入れて混ぜ、(2)(3)(4)を入れてさっくりと混ぜる


ともながあきよ さん

フードコーディネーター/日本茶アドバイザー

"「食」で日常を最高に豊かに"を軸に、Web媒体、新聞、フリーペーパーを中心に料理スタイリング・レシピ作成に従事し、携わったカタログ・会員誌は200冊近く。ほっとする家庭的なフードスタイリングを多く手掛ける。また、食品メーカーでの調理指導・レシピ作成指導を4年担当し商品の魅力を最大限に広げるアレンジレシピに定評がある。

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