つくり手の想い とかちの味力 技術・魅力にせまる

Vol.4 十勝の豆

Vol.4 十勝の豆

お菓子も料理も、いろどり鮮やかに。
高品質で希少な豆類を育てる、生産者のこだわりに迫ります。

Episode 03 日本一の豆の町、本別町

本別が豆の町と呼ばれる理由

本別町では、開拓当初から冷害に強い豆の栽培を行ってきました。

本別町で美味しい豆が生まれる理由の1つが日照時間の長さと寒暖差。

産地として知られる十勝の中でも、大雪山からあがった太陽の光が直線的に降り注ぐ土地は、本別町と清水町の熊牛地区だけだといいます。この太陽の下、豆の成長・収穫期の昼の気温が高く、夜は冷涼という気象条件に恵まれ、町を流れる美里別川、本別川、利別川の3本の河川に育まれた肥沃な大地で、タンパク質と甘味が凝縮された高品質な豆が生まれます。

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また、戦時中には町に軍馬圃場があって堆肥を活用する農業が普及していたことから、この地域では早くから耕畜連携(注1)や減農薬化にも取り組んでいました。これもこの町で、安全でおいしい豆が出来る理由の1つとなっています。

大正時代には戦後復興による穀物相場の高騰で、「世界の相場を動かす本別」とまで呼ばれた時代もあったといいます。この時代には豆成金・でんぷん成金が登場し、100円札を焚き付けに使って灯をともしたというエピソードが残っているほどです。

昭和になると生産量でも日本一を記録し、まさに豆の本別町となりました。

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※注1:耕畜連携:野菜や豆をつくる「耕種農家」と「畜産農家」が連携して、耕種農家で生産した飼料作物を畜産農家に提供し、家畜の糞尿で作った堆肥を農作物の生産に活用すること。

豆は本別町民のプライドです

道の駅を訪問すると多種多様な豆がずらり15種類ほどならんでいます。大豆・小豆はもちろん、金時、花豆、虎豆...中には栗豆、パンダ豆、うずら豆、白小豆、エンドウ豆など他町ではなかなかお目にかかれない貴重な豆も手に入ります。

町内には、豆に関するグループやイベントも多数あります。中でも「本別発・豆ではりきる母さんの会」では、地元農家のお母さんたちが中心となり、豆腐や豆菓子などの加工品を作って販売しています。


毎年2月の節分前後には、農協・商工会の青年部が主催する「豆まかナイト」が開催され、町の風物詩となっています。「鬼退治用の豆を作る畑」からスタートし、地元小学生と一緒に収穫した2トンの大豆は、リサイクルしながら使われ、まさにこの日は町中が豆にまみれます。

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各家庭では手前みその文化が根強く残り、毎年、町内の味噌・醤油の製造業者である渋谷醸造には麹を買い求める人が絶えません。本別町民は自ら豆を作り・豆を楽しみ、豆を消費することで、その文化を守り続けているのです。

町を挙げて開発した豆製品のオリジナルブランド「キレイマメ」はまさに豆の町ならではの商品。「キレイマメ」シリーズはすべて本別発祥の黒豆「中生光黒(ちゅうせいひかりくろ)大豆」を使用しています。中生光黒はその名の通り、豆の表面がピカピカと光沢のある見た目にも「キレイな」黒豆です。「ツヤツヤで粒の大きな黒大豆を食べて身体の中からキレイになってほしい」と、平成19年に町内の複数の企業・団体が集まりキレイマメの会が発足。黒豆の豊富な栄養素とデトックス効果に着目し、企業の垣根を超えた統一ブランドのバラエティ豊かな15商品が生まれました。

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豆の町・本別で91年、渋谷醸造

1933年創業の渋谷醸造は、豆の町・本別町の歴史を見続けてきたとも言える老舗。
味噌・醤油・麹を中心に豆の加工品を製造販売しています。創業者の久保久八氏は「丸久」という屋号でリヤカーを引きながら味噌や醤油を量り売りし、地域に根付いた商売を行っていました。その努力と情熱は、町誌にも記録されており、地元住民に深く愛されています。

その4代目となる岡田 清信社長は、伝統文化を大切にしつつ、顧客のニーズに合わせた新しい商品の開発も精力的に行っています。前述のキレイマメの会の取りまとめ役にも奔走し、「豆の町本別」を支える重要な役割を担っています。

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渋谷醸造の未来に向けた、味噌と加工品づくり

昭和30年代・高度成長期、本別町には2件の味噌蔵と7件の豆腐屋がありました。しかし1961年大豆の輸入自由化で、次々と閉店を余儀なくされていったと言います。

「輸入大豆に押され、苦しいの連続だった」と岡田社長は振り返りますが、品質的に圧倒的な優位性を持つ本別の大豆の可能性を信じ、ポストハーベストや遺伝子組み換えもなく、安全性を担保した商品を作りたいと頑張ってこられました。「30年前は原材料費が高いと言われ、商談しても豆はなんでも一緒でしょ?と言われたこともあったが、ここまで踏ん張ってきたおかげで、今では逆にストーリー性が光ることとなりました」と話します。

元々味噌と醤油が大好きだった岡田社長は建設業界の出身。前身である渋谷商店が事業をやめると聞いて第三者継承を決意。発酵技術を学び、調味料分野から健康食品分野に広げていく可能性もあるのでは?と考えて事業を引き継がれました。

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渋谷醸造の味噌・醤油は、添加物や保存料を使用せず、昔ながらの製法で時間をかけて熟成させています。そこには、「お客様が毎日口にされるものだからこそ、安心して美味しく食べられる商品を作りたい」という岡田社長の想いが詰まっています。

加えて、企画力、商品開発力に富んだ岡田社長は、昔ながらの味噌・醤油だけでなく、次々と新たな商品も開発。

例えば、中生光黒大豆を皮ごと丸々使って作った黒豆味噌は、赤味噌のような風合いで香り豊かな逸品。無添加で、北海道産米の酵母が引き出す自然な甘味が特徴です。

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また、麹を使った商品もラインナップ豊か。「こうじ発酵あん」は、砂糖不使用の小豆あん。砂糖の代わりに麹を発酵させて甘味を引き出しました。10年前から開発に取り組み、糖度を56度まで上げられる技術を持っています。普通のあんこの様に、どら焼きなどの和菓子の材料に使ったり、アイスのトッピングに使用したりと使い方は様々。「生こうじ」で作った甘酒の「麹のめぐみ」シリーズも、その自然な甘さで人気です。

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いずれの商品も地元本別の豆にこだわり、自然の味にこだわった、安心して毎日の食卓で楽しんで欲しい商品。岡田社長は、「豆の町・本別」とともに、これからもその素晴らしさを国内はもちろん海外へも広めていきたいと考えています。



おすすめレシピ

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緑野菜の黒豆味噌バター和え

しっかりと熟成された黒豆味噌は、見た目は濃い色ですが、華やかな香りと黒豆の持つコクと甘みを感じる味噌です。ほんのりと酸味があり後味がスッキリしているので、お味噌汁などの普段使いにもぴったりです。

今回は、黒豆味噌、バター、にんにくを合わせて味噌バター和えに。さっと茹でた野菜を絡めただけで、ごはんにもお酒にも合うパンチのある一品になります。今回使用した野菜以外にもほうれん草などの葉野菜の他、芋類、根菜類など、好みの野菜に絡めて、黒豆味噌のコクのある味わいをお楽しみください。

<材料>(2人分)

アスパラガス
2本(約100g)
いんげん豆
50g
スナップえんどう
50g
にんにく
3g
バター
10g
【A】
黒豆味噌
大さじ1
みりん
小さじ2
こしょう
少々

<作り方>

(1)

【A】の調味料を混ぜておく。

(2)

アスパラガスは根元を切り落とし、穂先部分を残してピーラーで皮をむく。インゲン豆、スナップエンドウはヘタを折り、筋を取っておく。にんにくはみじん切りにする。

(3)

鍋に湯を沸かし、塩・適量を加えて、それぞれの野菜を2分程度茹で、好みの固さになったら、冷水にとって冷まし、ザルに上げて水気を切る。

(4)

フライパンにバター、にんにくを入れて中火にかけ、香りが立ってきたら、混ぜた【A】を加えて手早くかき混ぜて、バターと味噌をしっかり混ぜる。3)の野菜を加えてさっと絡めるように全体を混ぜて火を止める。


ともながあきよ さん

フードコーディネーター/日本茶アドバイザー

"「食」で日常を最高に豊かに"を軸に、Web媒体、新聞、フリーペーパーを中心に料理スタイリング・レシピ作成に従事し、携わったカタログ・会員誌は200冊近く。ほっとする家庭的なフードスタイリングを多く手掛ける。また、食品メーカーでの調理指導・レシピ作成指導を4年担当し商品の魅力を最大限に広げるアレンジレシピに定評がある。

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